医建エンジニアリング株式会社・三田 創吾
平成19年6月29日(金)、社団法人日本画像医療システム工業会(以下JIRAと言う)研修委員会及び関連機器部会主催『日本大学動物病院Animal Medical Center:ANMEC』研修見学会に参加した。日常業務において、本病院に出入りする事は何度かあったが、改めて施設内を見学するのは初めてであった。
病院内にあるカンファレンスルームにて、病院長で獣医学博士でもある田中茂男先生に施設の概要を説明していただいた。本病院は平成7年5月に総延床面積1,359.16m2 (1階床面積714.22u、2階床面積644.94u)が開設され、平成12年10月に241uに拡張工事、平成16年4月には2,100uの拡張工事を行い総延床面積が3,700uとなった。また、予約診療(二次診療)が98%を占め、年間約一万頭の診療のうち犬が87%、猫が12%、その他1%の比率で診療を行っているとのことである。初診料、入院料合わせて数十万円にもなること、猫の飼い主はそこまでお金をかけない、などの説明を聞くと、我が家では猫を飼っているため納得したくはないが犬の受診率の多さがそれを物語っているのだろう。近年は動物も人同様に長寿になってきており、死亡原因もガンが多く、動物診療においても、光学力学的治療(photodynamic therapy:PDT)や、IVR(Interventional Radiology)などの低侵襲治療を行っている。スライドでは内視鏡を用いて発見された異物の事例(石、ボタン、ささみ、骨)、腹腔鏡検査事例、腫瘍のある動物の写真などを見せていただいた。
田中院長の講義が終わると、実際に施設内を見学させていただいた。CTでは16列で造影剤を使用し心臓を見る努力をされているとのことである。MRIは1.5Tが導入されており、撮影時には人の膝用のコイルを使用する。CTやMRIは麻酔を使用して撮影するとのことであるが、状態が悪い時は麻酔をしない。また、一般撮影においても麻酔を使用せず、撮影者が防護衣を着用して撮影していること等が説明された。
内視鏡検査では犬猫は消化器の腸炎が多く、牛は肺炎が多いそうである。ICUにおいては高濃度酸素を使用し設備としては人と同様であった。入院室には大型犬用の犬舎もあり、室内にある薬品の持ち出しを防止するため室内は監視カメラで厳重に監視されている。この薬品であるが、動物用の薬品は農林水産省の認可をとるのが困難であるため、ひと用の薬品で量を調節して流用しているとのことだ。
診察室にはモニターが設置されており、そこでエックス線画像を見ながら飼い主に病状等を説明することができる。放射線治療室は4月から機器が稼動しており、室内に置いてある備品類にはすべて値段が貼付されており、学生は一目で価格が分かり無意識に丁寧な扱いになるという工夫を施していた。この方法は当社もぜひ真似をさせていただこうと思った。
動物病院の見学を終えると、食品加工実習センターでソーセージの製造過程を見学させていただいた。食品関係の施設では当然の事であるとは思うが、入場の際の衛生管理が徹底されており、髪の毛一本落ちないよう体に付着している埃をすべて掃ってから入場した。
ソーセージの製造工程は次の通りである。
1.骨抜き⇒2.整形⇒3.血絞り⇒4.塩漬け⇒5.水洗い⇒6.巻締⇒7.乾燥・くん製⇒8.湯煮⇒9.水冷⇒10.冷却⇒11.包装
こちらのセンターで製造されているハム、ソーセージ、ベーコン、燻製品、缶詰などは実際に販売されており、消費者からも好評をいただいているそうである。実際、ソーセージを試食させていただいたのだが、これが非常に美味しく私は一人で3本も食べてしまった。
最後は学内にある日本大学生物資源科学部博物館を見学させていただいた。すでに閉館時間であったにもかかわらず、スタッフの方に快く応対していただき、館内の展示物について細かくご説明いただいた。当館は昭和49年に標本模型管理委員会として設置され、その後少しずつ標本類を収集し平成18年に日本大学生物資源科学部博物館と名称を改めてリニューアルオープンしたとのことである。館内には約3万点の収集物が保管されており、特に大型動物骨格標本や蝶類の標本が多いのが特徴である。展示は家畜・野生動物・鳥類・森林・植物・昆虫・農機具コーナーに分かれており、大型動物の骨格標本はガラスケースに入れず展示してあるため、かなりの迫力を感じた。しかも、この展示内容、展示物の数にもかかわらず入館料が無料ということで、ご家族やカップルで足を運ばれるのをぜひおすすめする。
すべての見学が終ったあとは懇親会が行われ、参加者やJIRA事務局の方々と情報交換をさせていただいた。
約3時間程度の研修見学会ではあったが、動物病院の現状や人同様の最新の画像診断機器を見せていただき、この分野は我々企業としてもまだまだビジネスチャンスがあることを痛感した。館内を案内していただいたドクターから、ここ数年ITEM(国際医用画像総合展)に足を運んでいるのだが、獣医師という事でほとんどのメーカーから相手にされなかったとのご意見をいただき、非常に胸の痛い思いをした。今回参加されたメーカー、JIRAの方々及びこれをご覧いただいている関係者の方々はぜひこれを機会にこの分野にもっと目をむけていただき、動物医療にもまだまだ我々が貢献できることがあるということを認識していただきたい。
最後に、このような機会を与えてくださったJIRA関係者及び日本大学動物病院院長 田中茂男先生に深く感謝の意を持って本レポートを終りとさせていただく。
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